『泳ぐのに,安全でも適切でもありません』江國香織☆集英社文庫

syoka2005-03-04



第15回山本周五郎賞受賞の短編集。最初の一編を読みだしてすぐに,ワタシの知っている(と思っていた)江國香織の作風とは随分違い,少々面食らった。好き嫌いの分かれる短編集かもしれない。ワタシは好きだ。甘ったるくなくシャープで,淡々としていて,覚悟のある文章だと思う。最後の一編『愛しいひとが,もうすぐここにやってくる』の最後の2行が,妙に印象に残った。江國香織は,こんな小説も書ける人なのだった。

『猛スピードで母は』長嶋 有☆文春文庫

syoka2005-02-21



ずっと気になっていた作家・長嶋有の,芥川賞受賞作。面白くて,いっきに最後まで読んでしまった。あくまでも軽い読み口,面倒な解釈はいっさい必要ない。それでも,ここに描かれているコト(ストーリーではなく,強いて言えば主人公の感情とか感覚とかいうようなもの)は,多分,言葉にするにはとてもとても難しいモノだと思う。カップリングの,文學界新人賞受賞作『サイドカーに犬』。そのタイトルの意味がわかった時は,ちょっとした衝撃。

『リプリー』(2000年アメリカ)監督/アンソニー・ミンゲラ

syoka2005-02-16



音楽も映像も美しい映画。


貧しい青年リプリー(マット・デイモン)は,金持ちの御曹司で自由きままなディッキー(ジュード・ロウ)と知り合う。ディッキーの気儘な愛情を受け,リプリーは束の間,裕福な上流階級の暮らしを知る。リプリーはディッキーを慕い,憧れるが,気まぐれなディッキーは,いつしかリプリーを疎ましく感じ出して。。。

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『ミナ』 (1993年フランス)監督/マルティーヌ・デュゴウソン


同じ日に,同じ病院で偶然に出生した,ミナとエテル。幼少の頃,バレエ教室で偶然に出会い,それからずっと親友だった2人の物語。


お互いの幸運に,時には嫉妬しあい,親友と比べて自分の人生を嘆きながら,懸命にシアワセになろうともがき続ける少女たち。うまくいかない恋,思い出すのも恥ずかしいような思春期の失敗,綺麗になりたい,というコンプレックスと孤独と虚栄心と。主役のミナ(ロマーヌ・ボーランジェ)と親友のエテル(エルザ・ジルベルスタン)を演じる2人の女優の,なんという魅力。性格も容貌も全く違う2人のやりとりは,時にコミカルで時に残酷で,それでも怖ろしくリアル。

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『マレーナ』(2000年イタリア)

syoka2005-01-06



あの『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。1940年のイタリア。参戦したその日に初めての自転車を手に入れた、主人公の少年時代の回想だ。


少年たちが密かに興味を持っているマレーナは、27歳の戦争未亡人。男好きのする美貌と肉体のせいで、町中の男たちの興味を引き、町中の女たちの敵意の的となっている。

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『スターリング・ラード』(2001年/アメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド合作)監 督 ジャン=ジャック・アノー

syoka2005-01-02

 

舞台は第二次世界大戦。対ドイツ軍との冒頭の戦闘シーン,迫力こそ『プライベート・ライアン』には劣るが,荒涼と広がる戦場の寒々しさが印象的だ。ひと目見ただけで,明らかに形勢は不利。しばし,呆然とその光景を眺める主人公たちは,次の瞬間には,その戦闘の中へいやおうなく,投げ込まれる。

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2002・デンマーク)監督 :ラース・フォン・トリアー

syoka2005-01-01



冒頭,暗闇の中,約3分30秒の音楽のみ。視力を失いつつある,主人公セルマの持つ暗闇を表しているのだろうか。


ミュージカルの始まりのような,オケの音楽が徐々に高まって,観客が途方に暮れだした頃,タイトルが映し出される。前衛的というか,実験的というか。

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