『マカロニ』(1985年イタリア)監督/エットレ・スコーラ

syoka2005-04-25



若い頃,アメリカ兵士としてイタリアに駐在していた男(ジャック・レモン)が,晩年になって商用でナポリを訪れた。彼はかつて恋人だった女性の家を訪れるが,奇妙なコトに,村中で彼のコトを知らない者はなく,女性の夫からも子供たちからも,英雄扱いをされ,大変な歓迎を受ける。それはその女性の兄(マルチェロ・マストロヤンニ)が,男から捨てられた妹のために,そうと悟られないよう長年にわたって代筆し,送りつづけた恋文のせいであった。その手紙には,彼女への愛の言葉とともに,世界中を旅して回る男の,架空の英雄話ばかりが書き連ねられていた・・・


ジャック・レモンマルチェロ・マストロヤンニという,今は亡き二大名優が顔を合わせた,素晴らしい作品だ。ジャック・レモン演じるアメリカ男は,今や大きな会社を経営する実業家で,金に不自由はしないが,時間に追われ,いつの間にか人間らしさを失いつつある。一方,マルチェロ・マストロヤンニは,陽気で人情味のある,典型的なイタリア男。家族への愛情に満ち溢れている。


その生き方の違いから,最初はしっくりいかず,衝突する2人だが,ナポリの美しい自然と,ストレートで温かい町の人々が,いつしか男の気持ちを溶かし始めて・・・ナポリの町の美しい風景,時に暑苦しいほどのナポリの人々の人情味。次第に心を許しはじめた2人が共に過ごす時間の数々・・・なんと愛嬌のある,愛すべき中年男たちだろう!


そして。2人が「親友」といえるほど距離を縮めた時,事件は起こる。


悲しい事件のあとのラスト・シーンは,あくまでも観客の想像に委ねられる。祈るような気持ちの中,ナポリの町じゅうに鳴り響く,高らかな鐘の音。救済か,失望か・・・でもワタシは,ハッピーエンドだと信じたい。このラスト・シーンの謎解きは,映画を観た者でないとわからないだろう。。。だから是非,この映画を観て欲しい。