『リプリー』(2000年アメリカ)監督/アンソニー・ミンゲラ

syoka2005-02-16



音楽も映像も美しい映画。


貧しい青年リプリー(マット・デイモン)は,金持ちの御曹司で自由きままなディッキー(ジュード・ロウ)と知り合う。ディッキーの気儘な愛情を受け,リプリーは束の間,裕福な上流階級の暮らしを知る。リプリーはディッキーを慕い,憧れるが,気まぐれなディッキーは,いつしかリプリーを疎ましく感じ出して。。。



マット・デイモンが,ひたすら素晴らしく,可哀想な映画だ。人間は誰でも,誰かに愛されたいし,認められたい。彼が,ディッキーを手にかけてしまったのも,自分の愛情を拒絶されたことに耐えられなかったから。彼になりすまして生きようとしたのも,愛した彼に自分を重ねたかったから。そして,なによりも元の場所に引き返す勇気がなかったから,だ。


若きアラン・ドロンが主役を演じた「太陽がいっぱい」のリメイクというものの,今回はリプリーのディッキーへの愛情に焦点があたっており,少し違う味わいになっていた。貧しい生活から抜け出して,嘘を重ねてでも,金のある世界で生きたい,という,人間の業の深さ,弱さという描き方は,あまり前面には出ていない。


マット・デイモンは,その素朴で純なカンジがはまり役で,ディッキーに大事にされている時のとても嬉しそうな表情と,拒絶された時の絶望的な表情が印象的だ。嘘を守り抜くために,殺人を重ねるリプリーを責める気持ちには全くなれなかった。どんどん行き場がなくなり,追いつめられてゆく彼が可哀想でならなかった。


ディッキー役のジュード・ロウ。この作品では,そんなに美しさを感じなかった(むしろ,この後の『スターリング・ラード』が印象的)が,裕福さゆえのワガママぶりというか,太陽のように奔放で,非情なカンジが良く出ていた。ぴったりのキャスティングだと思う。


といっても,やはりこれは,俳優としてはマット・デイモンの一人勝ち?