『マルコヴィッチの穴』(1999年アメリカ)監督/スパイク・ジョーンズ

syoka2005-04-12



途方もなく奇想天外でシュールで摩訶不思議な映画。


ある場所に不思議な穴を発見した,冴えない男の物語。その穴は,なんというコトか俳優「ジョン・マルコヴィッチ」の脳に通じていて,その穴に入れば,いつでもマルコヴィッチの中へ入るコトができる,のだ。


主人公は,気弱な売れない人形使い。愛する女をモノにするため,マルコヴィッチの身体を借りて,あの手この手で奮闘する。


当然のコトながら,「俳優・ジョン・マルコヴィッチ」を演じるのは,演技派の名優ジョン・マルコヴィッチ本人だ。「よく出演をOKしたなぁ」と感心する間もなく,目が点になる。「マルコヴィッチにこんなコトをさせるなんて!」のシーンの連続なのだから。。。監督の度胸と,このオファーを受けたマルコヴィッチの柔軟さに脱帽。


ゲラゲラ笑って見終わったら,少し哀しくなった。


自分が変わりたくても変われないから、その変身願望のゆえに人形をあやつる主人公。


今の自分のままでは愛されないから,自分を捨てて「マルコヴィッチ」の中に入ってしまい,彼女の命を助けるためにもとの自分に戻るのを承知で「マルコヴィッチ」から出るコトを決意する。そして,やっぱり彼女に捨てられる。でも,何年たっても彼女を忘れられなくて,自分ではない別の目を通して彼女を見続ける。「自分のいない世界」で幸福な,彼女の姿を。


奇想天外なストーリーに騙されてはいけない。ハチャメチャで,シュールで,変てこだけど,これは紛れもなく「愛の物語」だ。それも一方通行の,決してかなうコトのない。